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石風呂の歴史

石風呂の歴史。瀬戸内に残る、焼いた石で温まる蒸し風呂

大きな原石

※ 写真は浴槽に加工する前の原石で、文化財の石風呂ではありません。

この記事でわかること
  • 蒸し風呂の石風呂の、入り方
  • 重源と、山口県に残る石風呂
  • 国の文化財になっている3つの石風呂
  • 暮らしの中での使われ方と、いま

石風呂(いしぶろ)は、お湯に浸かる風呂ではありません。石でつくった室(むろ)の中で火を焚き、焼けた石の熱と蒸気で体を温める、蒸し風呂です。瀬戸内の沿岸を中心に、古くから使われてきました。

この記事は、山口県・山口市・周防大島町・愛媛県が公開している記録をもとに書いています。出典は記事の最後にまとめました。

石風呂の入り方

入り方は、土地によって少しずつ違います。記録に残る2つの例を紹介します。

山口県・周防大島の「久賀の石風呂」

山口県の記録によると、石室の中で小枝を燃やして石を焼きます。そのあと、海藻に海水をかけて中に敷き、蒸気を浴びます。中はとても熱くなるので、水に浸したむしろをかぶって入ったといいます。

愛媛県・今治の「桜井の石風呂」

愛媛県の聞き取りの記録では、シダに細い雑木を混ぜて焚きます。燃え終わったころに、海水で浸したむしろを敷きつめて入ります。穴の風呂で温まり、海で体を流し、また風呂に戻る。これをくり返したそうです。

どちらも、火で石を焼く・ぬれたものを敷く・熱気と蒸気を浴びるという流れは同じです。いまのサウナと、よく似ています。

重源と、山口県の石風呂

山口県には、鎌倉時代のはじめの僧・俊乗房重源(しゅんじょうぼう ちょうげん)が設けたと伝わる石風呂が残っています。

重源は、焼け落ちた奈良の東大寺を再建する役目を担いました。再建に使う木材は、いまの山口市徳地のあたりの山から切り出されました。山口県と山口市の記録では、岸見の石風呂は文治2年(1186年)に重源がつくったとされています。

山から大きな木を切り出して運ぶのは、たいへんな重労働です。石風呂は、その仕事にあたった人たちの病気やけがを治すために設けられたと伝えられています。

国の文化財になっている3つの石風呂

名前場所国の指定つくりと大きさ
野谷の石風呂山口市徳地野谷史跡(昭和10年12月24日)川沿いの大きな岩のふもとを、横穴の形に掘り込んだもの。中は奥行2.5m・幅1.9m・高さ1.1m
岸見の石風呂山口市徳地岸見重要有形民俗文化財(昭和33年4月18日)地元の花崗岩を積み上げた石室。幅4.4m・奥行3.6m・高さ1.8m。かやぶきの建物で覆われている
久賀の石風呂周防大島町久賀重要有形民俗文化財(昭和33年)花崗岩を積み、内側に粘土を厚く塗った石室。幅5.4m・奥行4.6m・高さ2.5m。一度に17人が入れる

野谷の石風呂は岩を掘った横穴、岸見と久賀の石風呂は石を積んだ室です。同じ石風呂でも、つくりが違います。

久賀の石風呂について、周防大島町は「1186年に重源が造ったと伝えられている」と紹介しています。一方、山口県の文化財の記録では、時代を江戸時代としています。言い伝えと、いま残っている石室の年代は、分けて考える必要がありそうです。

暮らしの中の石風呂

石風呂は、治療の場であると同時に、休みの場でもありました。

愛媛県の聞き取りの記録には、田植えが終わると「骨休めに石風呂へ行く」と出かけた、という話が残っています。近くの村から米を持って泊まりに来て、ゆっくり過ごす人もいたそうです。桜井の石風呂は、平成7年の夏の営業で、およそ6,800人が入浴したと記録されています。

久賀の石風呂は、薬師如来への信仰とも結びついていました。山口県の記録によると、庵の主が管理をして、入浴料を受け取っていたといいます。周防大島町によると、昭和20年よりあとまで使われていました。

いまの石風呂

  • 岸見の石風呂:山口県の記録によると、毎年6月5日の「石風呂開山忌」で、いまも焚かれています
  • 久賀の石風呂:文化財として保存されています
  • 桜井の石風呂:夏の間だけ営業する形で続いてきましたが、今治市は休止を案内しています(2026年10月に確認)

訪ねる場合は、公開の状況を、それぞれの自治体の案内で確かめてください。

蒸し風呂から、湯の風呂へ

「風呂」という言葉は、もともと蒸し風呂を指していたと言われています。お湯に浸かるほうは「湯」と呼ばれていました。いま私たちが「風呂」と呼んでいるものは、昔の言い方では「湯」にあたります。

石の浴槽は、この蒸し風呂の石風呂から直接生まれたものではありません。ただ、石が熱をたくわえる性質を使う点は同じです。くわしくは石風呂とはで、2つの石風呂の違いを整理しました。

出典

いずれも2026年10月に確認しました。

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